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システムの信頼性・セキュリティ

フィールド高信頼化のための回路・システム機構

CMOSデバイスの微細化により、トランジスタの経年劣化による性能低下が問題となっています。特に、医療システム、交通システム、データセンターなど高い信頼性が要求されるシステムでは経年劣化によるシステム障害は極めて重要な問題です。経年劣化対策として、劣化量を予め見積もり十分な動作マージンを確保する信頼性考慮設計が従来からなされています。しかし、信頼性考慮設計では、信頼性を保証するために最悪時の劣化量を見積もってシステムクロックを決定するため、過大な動作マージンによる性能低下を招いてしまいます。そこで、本研究室では、システムオンチップ(Sytem-on-Chip, SoC)のフィールドでの信頼性を向上させるために、遅延測定に基づく劣化検知システムを提案しています。

提案手法では、フィールド(出荷後の運用時のこと)で定期的にSoCの性能を測定します。そのために、遅延測定のためのテストを制御するSoCテストコントローラと各コアでテストを実行するためのコアテストコントローラをSoCに組み込み、定期的な遅延測定と劣化進行度の解析を行います。提案手法の実用化のために、測定精度の向上、テスト品質の向上、テスト時間の短縮、効果的なテストスケジューリングなど様々な課題に取り組んでいます。

高信頼メモリアーキテクチャ

システムオンチップ(SoC)のほとんどのエリアを組み込みメモリが占めるなど、メモリの信頼性が重要性を増しています。CMOSデバイスの微細化により、メモリにはソフトエラーが起こりやすくなり、さらに、劣化によりフィールドでの故障も懸念されます。ここで、ソフトエラーとは、α線、中性子線など二次宇宙線などの衝突によりメモリの値が反転する(0が1に、または、1が0に変わる)一時的なエラーをいい、故障とは経年劣化によりメモリが永久的に誤動作することを指します。ソフトエラーは、メモリのセルの値が間違っているだけで上書きすれば解消されますが、故障したメモリセルは上書きしても故障の修復にはなりません。この2つの問題に対して、これまでは別々の対策が取られていました。

ソフトエラーに対する代表的な対策として、誤り訂正符号(Error Correction Code, ECC)が広く採用されています。ECCはオリジナルワードに冗長ビットを付加して符号化する手法で、符号化して得られた符号語は、ビットが反転するなど誤りが起きても元のワードを復元することが可能です。ECC付きメモリでは、符号化して得られた符号語をメモリに格納し、メモリを読み出す際には符号語を復号化してオリジナルワードを抽出します。ECCとそれを利用したスクラッピング(ECCを介してメモリを読み出し、再びECCで符号化して書き戻す手法、ソフトエラーをメモリから取り除くことができる)を用いることで、メモリにソフトエラー耐性を与えることができます。

ハード的な故障に対する対策としては、スペア空間(スペア行、スペア列、スペアワード)を用いた修復が利用されています。大規模メモリを高い歩留まりで製造することは困難なため、メモリには予めスペア空間が用意され、テストにより故障と判定された箇所を、製造時やフィールドでスペアを用いて修復します。フィールドでの修復技術として、故障を含むワードのアドレスを、故障を含まないワードのアドレスに置き換えて利用するアドレスリマッピング方式などが考えられています。

本研究室では、ECCと修復機能を組み合わせた高信頼メモリアーキテクチャの研究を行っています。まず、スペア空間が十分ある場合は、修復機能を用いて故障ビットに対処し、スペア空間が枯渇してくると、一部の故障ビットはECCを用いて出力を訂正して利用することで、メモリの寿命を延ばすことに成功しました。さらに、劣化検知テストを組み合わせることで、劣化が進み故障寸前のメモリも修復対象とすることで、さらにメモリの寿命を延ばすことに成功しました。( 文献 )

ハードウェアトロイ回路検出

VLSI製造フローのアウトソーシング利用などで、ハードウェアであるVLSI回路にも不正な回路であるハードウェアトロイ回路が混入される危険があります。ハードウェアトロイ回路は、特殊な条件で発動するため故障検出のためのテストでの検出は困難とされています。そこで、本研究室では、入出力以外も観測するサイドチャネル解析を行い、ハードウェアトロイ回路を検出する手法を研究しています。

本研究室では、故障検出用のテストパターンを適用した際の電力を解析することでハードウェアトロイ回路を検出する手法を研究しています。故障検出用のテストパターンを用いることで回路中のあらゆるトランジスタのスイッチングを可能にし、さらに、スキャンチェーンと呼ばれるテスト用回路やクロックゲーティングを用いて、特定のセグメントだけをスイッチングさせることでハードウェアトロイ回路の効果的に検出する手法を提案しました。提案手法では、ゴールデンICと呼ばれる正常とわかっている回路を利用しない手法、クロックツリーに基づいたクロックゲーティング手法など、手法の実用性も重視した研究を行っています。( 文献 )